夏場の試合が日本にとってメリットになる場合も
ピッチ上でのプレー面を考えれば、夏の暑い時期にサッカーをプレーすることにポジティブな要素はほとんどないといっていい。夏に試合をすることでゲームのパフォーマンスが落ちれば、Jリーグという“コンテンツ”の価値も下がってしまう。それでも夏に試合をすることのメリットはあるのだろうか。
「クリエイティブなプレーをするという条件から考えれば、夏に試合をしない方がいいでしょう。ただ、W杯は夏に行われますし、アジア予選では東南アジアや中東など日本よりも暑い場所で試合をすることもあります。暑い中では苦戦することも多いですが、夏のシーズンに試合があるからこそ、あれぐらいで済んでいるとも言える。それから、まだ先の話ですが、2022年のW杯がカタールに決まりましたし、そこで有利になる可能性もあります」
ただ、ヨーロッパでプレーする選手が増えたことで、日本代表は半数以上が海外組で占められることも珍しくなくなっている。ヨーロッパの選手が増えた分、暑さに適応できなかった場合の影響は大きい。
「暑さに慣れるには1週間あれば十分、少なくとも4日あればいける。これは暑熱順化といって、暑いときにパフォーマンスの低下を防ぐ方法の1つで、事前に発汗を促すことによって、体温の上昇を抑える効果があります。問題は2月とかに東南アジアでの試合があるとき。真冬のヨーロッパから暑いところにきたときには、4日間でも難しいかもしれない。そういうときはサウナに入ってもらって、軽く運動するなど、暑い中で体温を上げることに慣れておくことも必要です」
「『夏にやらない』という選択肢は今のところないので、その中でできることをやっていくことが大事です」と安松氏は言う。
Jリーグが現行のシーズン制で行われる限り、ワールドカップのアジア予選がある限り、「暑さ」は常について回る不変のテーマと言っていい。暑さという地理的ハンデとうまく付き合っていくこと――。それは日本サッカーが強くなるための立派な強化策の1つと言えるだろう。
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プロフィール
安松 幹展(やすまつ・みきのぶ)
立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科教授。博士(理学)。専門は、運動生理学、環境生理学で、特にサッカー選手におけるコンディショニング、パフォーマンス分析を主なテーマにしている。日本サッカー協会技術委員会フィジカルフィットネスプロジェクトのメンバーとして各年代の日本代表チームに対するコンディショニングサポートを行っている。著書に『コーチとプレーヤのためのサッカー医学テキスト』(共著、金原出版)、『サッカーのコンディショニング』(共著、大修館書店)など。
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