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セリエA 11年前

なぜイタリアで3バックが流行したのか? 超進化型システムのメカニズムに迫る(後編)

text by 神尾光臣

継続した革新より精密になる3バック

 はまれば攻守に効果的だが、バランスを整えるのは決して容易でない3バックシステム。そんな中、今季のセリエAでは、さらに新しい傾向も出現しつつある。システムの併用、あるいは途中変更である。カターニアとパルマは今季、これで好成績をあげている。

 カターニアは両ウイングが守備に入る4-3-3を基本のシステムとしているが、CBレグロッターリエにスポッジ、そしてベルッシは3バックでも広いゾーンをカバー出来る柔軟性を持っている。これを利用し、相手に合わせて3バックと4バックの使い分けを始めた。同格の相手にはサイドバックが攻撃参加出来る4バックを使用し、格上には守勢時に5-4-1的にゾーンをカバーする3バックで挑む。

 第22節のフィオレンティーナ戦は、この緊密な守備で相手のポゼッションを抑えた。

 一方、22節にナポリに破れるまでホーム無敗を誇ったパルマは、試合中に4バックと3バックを切り替えてくる。ベースは4バックで、ウイングハーフのビアビアニーを軸にサイドを攻め立てる。一方で時間が経過し、相手が攻め気になってきたとき、ドナドーニ監督はたとえビハインドの状況であろうとCBを1枚増やして3バックへ変更を図るのだ。通常、このような采配は『守りに入れ』との過剰なメッセージとなり易いが、チームは後方をケアしつつ、狡猾にカウンターを狙うという戦術的な意図を理解する。そして実際に点も取る試合も多い。

 さらには、4-1-4-1を基本フォーメーションとして戦っているラツィオも、カンピオナートの傍らで3バックを練習。そして29日のコッパ・イタリア準決勝第2戦では、ユベントスに頭から3バックで挑み、勝利で決勝進出を飾った。「3バックは守勢の時に、中央に人数を掛けて守備を安定させることが出来る。またその一方で、攻撃時も前に仕掛け易くなる。複数のシステムを使い分けるのが我われの理想だ」とペトコビッチ監督は語っていたが、彼らはその通りに結果を出したということを意味する。

 現在リーグ戦は3位と好調のラツィオだが、彼らのウィークポイントは薄い選手層だ。戦術のオプションとして3バックを持つことは、戦い方のバリエーションを確実に拡げるはずである。

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