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セリエA 11年前

なぜイタリアで3バックが流行したのか? 超進化型システムのメカニズムに迫る(前編)

text by 神尾光臣 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

 もともとサイドバックとしては攻撃的だったリヒトシュタイナーは、ウイングバックとなったことで安心して前に出られるようになり、サイドアタックの問題も解決。運動量でボールを刈り取り前に飛び出すビダルとマルキージオ、そしてその後方からチームを操るピルロという中盤の逆三角形は、4バックの時から変わらずに活かせた。

 彼らの勢いは3バックの採用で盤石のものとなり、そのまま一気に無敗優勝へと突っ走ったのだ。さらに今季は、本来はインサイドMFである新戦力のアサモアを左ウイングバックにコンバート。彼を常に高い位置に張らせることにより、ユベントスのハイプレスはさらに強烈なものとなっている。

美しいパスサッカーを可能にしたビオラ

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フィオレンティーナの基本フォーメーションは3-5-2。中盤を厚くしたため数的優位の場面が多くなり、またピッチをワイドに使うことで、モンテッラ監督はポゼッションサッカーを実現させた。パスクアル、クアドラードが深い位置まで侵入することでスペースが生まれ、アクイラーニ、バレーロ、ピサーロは自由にプレーできる。

 一方フィオレンティーナは『数的優位の保たれた中盤』、『ピッチをワイドに占有出来ること』といった3バックの特長を、ポゼッションサッカーを実現するための戦術的な方法論として活用している。

 左サイドには上下動のタイミングが絶妙でクロスも正確なパスクアル、そして右サイドには攻撃的なクアドラードがいる。しかし彼らの役割は単にサイドを破ってクロスを出せ、ということだけではない。彼らがサイドの高い位置に張れば、敵のディフェンスラインも横に広がり、つまり中盤にもスペースが出来る。それを使って、ピサーロやボルハ・バレーロ、そしてアクイラーニのテクニシャンたちが技術を存分に披露するのだ。

 相手の布陣は横に拡げられた一方で、中盤の数的優位が確保され、どのエリアでもトライアングルが作り易いようにディスタンスが保たれている。つまりは、ポゼッションを展開するための条件が戦術的に保たれているのである。

 それだけではない。ポゼッションには、3バックも積極的に参加してくるのである。ゴンサロ・ロドリゲスやロンカリアは、守備能力だけでなく足元の技術も卓越した南米出身のDFだ。

 試合を見ていると、彼らが細かくパスを回して相手FWのフォアチェックをかわすシーンも度々ある。中盤が彩り豊かなパスワークは彼らのビルドアップがベースとなっており、さらにはセカンドトップのヨベティッチやリヤイッチも中盤を助ける。イタリアのチームとしては類を見ない美しいパスサッカーは、こうして可能となっているのだ。

【後編に続く】

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