3バックを導入した監督たちとその理論
「戦力の限られたチームでも守備専従にならず、攻撃を楽しみながら勝つにはどうしたら良いか」という命題のもと、「広くピッチを使える」という理由で3バックにこだわった。そして、モダンサッカーの方法論で3バックを成立させるメカニズムを確立。この戦術のもとでマッツァーリは、選手から実力以上のものを引き出して好成績を打ち立てて行く。
リボルノを54年ぶりのA昇格に導き、レッジーナ時代の2007年にはマイナス17というペナルティを跳ね返してチームを残留させた。その後サンプドリアを経てナポリの監督に就任すると、チームを強豪の一角へと成長させている。
3バックを駆使して名をあげたのは彼だけではない。時同じく、ジャンピエロ・ガスペリーニ監督は3-4-3のフォーメーションを駆使して、弱小クロトーネ(当時B)で超攻撃サッカーを展開。その後ジェノアの監督に就任すると、果敢でシステマチックなサイド攻撃を武器にチームをセリエAへ昇格させ、そしてAでは最高位となる5位の好成績へと導いた。
ウディネーゼのフランチェスコ・グイドリン監督もその一人だ。彼の場合は守備に方向性を振っているが、後方に枚数を整え易いという3バックのメリットを活かして守備を強化した。ウイングバックを積極的に攻めさせても守備で破綻しない組織を完成させ、近年はウディネーゼをコンスタントに上位入賞させている。
時代は着実に変わった。彼らが率いたチームがセリエAを席巻するようになると、当然のように模倣をするクラブが現れ、ついにその潮流はビッグクラブにまで及んだ。冒頭のスペイン戦の後、マッツァーリは自信も露にこんな言葉を残している。
「プランデッリ代表監督は聡明だ。選手をポジション毎の特性に合わせた上で、サイド攻撃とハイプレスを重要視する3バック。これはまさに、私がボローニャの下部組織時代から12年かけて築き上げてきた戦術だ。よく『今時3バックなんて正気か?』などと言われ続けてきたが、いまや欧州でも注目されている。ユベントスのコンテ監督だって、我々の戦術を模倣したのだからね」