闘莉王の招集は何を意味するのか?
そしてこの言葉は「なぜ、闘莉王が呼ばれないのか?」という質問に対する答えにもなる。闘莉王のパーソナリティーをひも解くと、
・空中戦やセットプレーに強い
・ロングパスやサイドチェンジの精度が高い
・(今野に比べると)ショートパスの出し手、受け手としての能力が低い
・スピードや俊敏性がなく、カウンター時には置き去りにされやすい
このような特徴は明らかにディフェンスラインが低いチームに適したものであり、攻守に高いディフェンスラインを保つことが要求されるザックジャパンでは今野のほうがベターだ。
ちなみに吉田もあまりスピードのある選手ではないが、名古屋グランパスU-18ではボランチを務めた経験があり、もともとは中盤の選手だった。
ヨルダン戦の後半15分に喫した2失点目のように、カウンターを食らって走り合いになる守備の局面にはそれほど強くないが、攻撃の組み立てには元ボランチとしての持ち味を発揮する。189センチの長身や若さを考えると、吉田を起用し、今野と組み合わせるのが今後のためにもベストと判断されたのだろう。
「新たな日本代表ではディフェンスラインを高く保って戦う」。それがすべての出発点だ。
裏を返せば、今後、闘莉王がザックジャパンに呼ばれることがあれば、それは戦術に対する修正を示唆する。つまり、南アフリカで岡田監督が下した決断のように、世界の強豪と戦う中ではディフェンスラインを高く保つことが困難となり、闘莉王を入れてゴール前の空中戦の強さを上げる方向に舵を切る可能性が出てくるということだ。
このような見方をすると、ザッケローニのメンバー選考にも1つの柱が浮かび上がり、すっきりと試合を観られるのではないだろうか。
【了】