すばやい処置で危険回避!
熱中症が疑われる場合、まずしなければならないのが涼しい場所に移動し、身体を冷やすことです。
熱失神や熱疲労では、風通しのいい木陰やクーラーの効いた室内などで休ませ、水分を補給すればたいていは回復しますし、熱けいれんでも生理食塩水(0.9%)の給水で通常は回復できますがこのような処置をしても回復しない場合、吐き気などで水分補給ができない場合には医療機関を受診させる必要があります。また、症状が現れたら、その日の練習や試合を休ませることも大切です。
体温が異常に高い、あるいは意識障害がある場合には熱射病の可能性があります。冷却処置をし、集中治療のできる医療機関に一刻も早く運ぶことが必須です。ただちに救急車を手配するとともに、衣服を脱がせ、皮膚に水(冷水でなくとも構いません)を吹きかけてウチワや扇風機などで熱を発散させます(気化熱を利用した冷却方法)。
氷嚢などがあれば、頚部(首)や脇の下、股関節付近などの太い血管がある箇所に当てて直接血液を冷やしましょう。熱射病は死につながる緊急疾患。一刻も早い処置を心掛けてください。
熱中症の予防とスキルアップとは表裏一体です。真夏の炎天下で過剰なトレーニングを課すよりも、環境と選手の体力にあったメニューで臨む方が熱中症の危険は少なくなり結果的に効果的な練習として子どもたちのレベルアップにもつながります。
夏という子どもたちにとって大切なスポーツの機会を活かすためにも、正しい知識を持っておきたいものです。
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プロフィール
川原貴(かわはら・たかし)
独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター、スポーツ医学研究部・統括研究部長。