カズがブラジルで決めたゴールの意味
昨年のクラブワールドカップで南米代表だったコリンチャンスのサポーターが大挙して日本にやってきたことは記憶に新しい。コリンチャンスはサンパウロで最も熱狂的な人気を持つクラブである。
長らくブラジルでくすぶっていたカズこと三浦知良が、ブラジル全国で一躍名前が知られるようになったのは、1988年3月20日のコリンチャンスとの試合だった。当時、キンゼ・ジャウーというサンパウロ州の中堅クラブに所属していた知良は、前半42分に得点を決めている。これは彼にとって最初の公式試合での得点だった。この試合でジャウーはコリンチャンスを破った。
コリンチャンスがジャウーのような田舎町のクラブに負けることはあり得なかった。そのきっかけとなる先制点を挙げた知良は大きく取りあげられた。相手がコリンチャンスだったからこそ、その後、彼が階段を駆け上っていく契機となりえたのだ。
ブラジルには無数にクラブがある。その中でも大都市のサンパウロとリオ・デ・ジャネイロのクラブは二つのベクトルで大ざっぱにその個性を分類することが出来る。
そのベクトルとは民族コミュニティと支持層の貧富である。ブラジルは、欧州をはじめとした世界各国から移民を受け入れており、同国人が固まってコミュニティを作っている。そのコミュニティの支持を受けるクラブか、そうでないクラブか。
また、ブラジルでは歴史的にごく一部の富裕層がほとんどの富を独占してきたため、貧富の差が激しい。富裕層から好まれるクラブなのか、貧困層から愛されるクラブなのか――。