ブランドの陳腐化を防ぐ難しさ
しかしエバートンは、他の多くのクラブと同様、余裕のある財務状況ではない。2012年には年間売上高約120億円を記録したものの、4期連続で赤字を記録。単年でも約14億円の赤字を出している。
さらにファイナンシャル・フェアプレーの適用により、財務状況改善に向けたプレッシャーは以前よりも増している。エンブレム刷新にかかる詳細な費用や作業工数は明らかにされていないが、エンブレム変更は通常、中期的なスパンで取り組むものだ。わずか1年で再度取り組む負荷は、財務面でも業務面でも非常に大きいと言える。
ファンのイメージを裏切ることなく、時代の潮流に合わせてブランドを刷新していくことのジレンマ。コーヒーチェーンのスターバックスがロゴを刷新した際も、新たなロゴに違和感を覚えた人は決して少なくないだろう。
時間が積み重なり、エンブレムやロゴといったブランドイメージがファンに定着すればするほど、それが刷新された時の反発は大きくなる。しかしその一方、時間の経過によってトレンドは変化し続けていく。ブランドの陳腐化を防ぐために、ブランドの刷新は欠かせない。
日本でJリーグが創設されてから20年。文化的な要素が強まっていく中で、クラブが「変革すべきもの」と「維持すべきもの」の見極めはより難しくなっていくだろう。日本のサッカー文化の担い手であるJリーグにとって、今回のエバートンのエンブレム騒動は大いなる教訓となり得るはずだ。
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