がむしゃさが感じられない
ここで少し映像を巻き戻す。
――クロスを上げたマルセロ(6)に対しての守備は?
「マルセロ(6)に寄っているのは…本田(4)ですか。本田が行けると言えば行ける。ただ、日本は全体にフワッと試合に入っている印象がしますよね。ブラジルのカチッとした印象に比べて。ポーランドで戦ったときのブラジルもカチッと試合に入っていました」
もう一度映像を巻き戻して確認をする。
「ブラジルのクロスが入ったときの守備陣形はコンパクトではあるんです。これ以上コンパクトにするのはちょっと難しいと思います。それに、このネイマール(10)のシュートも狙っていないと思うけどなあ。簡単ではないです。半分より右側は狙っていると思うけど」
――ゴールマウスの角ですからね。
「あそこは狙っていないですよ。狙えば枠外に外れる。だから守備の対応として責められるところがあるかというと……まあ、開始3分でフワッと入ってしまったばっかりに球際が弱いと言えば弱いのかもしれない。ただ、強いて挙げればこの浮き球のところ。この局面のほうが簡単に修正できますね」
浮き球のところ、というのは、ネイマールにクロスを上げたマルセロにパスが渡る、その前のシーンだ。左サイドからネイマールが切り込みシュートを放つ。そのボールを日本の守備陣がブロック。
ボールはセカンドボールとなって左サイドの深い位置で真上に跳ね上がった。そしてワンバウンド。その落下地点にはフッキ(19)、対する日本は清武(8)が体をくっつけて、遅れて長谷部(17)が対応しようとしていた。
「ここ(フッキ)は清武と長谷部で挟めばこんなに簡単にマルセロにパスを戻させないで済むし、何とかクリアできる。この守備対応には、立ち上がりのフレッシュさがないんですよね。
それと、僕が感じるのは、必死にがむしゃらにやるのが恥ずかしい、とでも感じているのかなあということ。120%がむしゃらにやる。それくらいの覚悟でプレーしないといけないのに、日本はアジア予選で構築してきた攻撃サッカーがあって『そのプレースタイルを発揮して勝つのが恰好いい』とでも思っているのか、そう思っていたとすれば何十年も早いのではないでしょうか。
この場面でブラジルは非常にキビキビとプレーしている印象がある。サッカーは何が起こるかわからない。それを選手全員が理解しながらプレーできていて、日本に対して油断も隙もなくギア全開で立ち向かって来ている」