日本のサッカーの現場は思考停止している
要するに、『ワンフレーズ政治』によって民意が左右に振れまくるように、いま流行の何かがあればそれに(ほとんど)何の疑いも無く乗っかってしまうという半ば思考停止の状態と言えるのだろうか。いずれにせよ、これがサッカーの世界でモノの見事に反映されたのが“パスサッカー”ということになるのだろう。
その真逆の意味で、いまだ『罰走』を強いては高校生を疲労骨折に、のみならず靭帯断裂にまで追い込むという狂気の育成現場もまた深刻な思考停止に陥っているという以外にない。
ちなみに、この“靭帯断裂”などは前述の通り、筆者が一時帰国した際に高校サッカーの現場で目の当たりにしたことである。なお、さらに詳細かつ具体的なリポートを『サッカー批評61号』誌上で加部究氏が書かれている。
ボクシングを例に考えてみる。ガードを下げっ放しのボクサーは1RにしてボコボコにされてTKO確実だろうし、『ジャブボクシング』も、『ストレートボクシング』も、『フックボクシング』や『アッパーボクシング』もあり得ない。
野球でもそう。『カーブピッチャー』や『フォークピッチャー』も聞いたことが無い。ダルビッシュのスライダーが活きるのは、もちろんそのボールそのものがエゲツナイまでに凄いというのは論を俟たないが、彼の真っすぐのみならず他の球種もまた素晴らしく、その“使い分け(配球の妙)”に優れるからだ。
しかし、サッカー界ではこうしたワンフレーズが罷り通り、のみならず、それに相反する言葉として使われるのが『リアクションサッカー』。これもよくわからないが、概ねこの二つに大別される。摩訶不思議である。
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