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研ぎ澄まされた感覚の先にゴールがある。名波浩が見るブラインドサッカーの魅力

text by 木之下潤 photo by Haruo Wanibe

名波浩が語った“お互いに学べる”部分とは?

――決勝を見て、ほかに感じたことはありますか?

「やっぱり、活躍している選手は仕掛けている人。ハットトリックを決めたAvanzareつくばの田村友一選手をはじめ、松戸・乃木坂ユナイテッドの佐々木康裕選手は敵を恐れず、ドリブルでゴールに向かっている。守備も同じ。『Voy、Voy』と声を出しながらボールを持っている選手の方向に、自然に体が反応している人はボールを奪えるし、相手をうまく邪魔できている。

 決勝を見て気づいたのは、この競技は時間を稼ぐのも大事なのかなと。タッチラインの壁を使ってキープをするのか、前を向かせないのか、攻守によって時間の使い方はいろいろあるけど、チームのためにどうするのかが重要だと改めて思いました」

――“お互いに学べる部分がある”と言われていました。具体的にはどういう部分ですか?

「ブラインドサッカーは自分からボールが離れると、ノーチャンスになる競技です。だから、自分のプレーエリアにボールを置くことが大切。サッカーで例えると、ポゼッションサッカーをやるチームにとって、自分のプレーエリアを知ることは大事な要素です。

 サッカーは視覚の重要性が高いので、サッカー教室を開く時、僕は子供たちに『状況を見て判断しろ』という指導をする。ボールから目をそらさないような動き方など。そういう意味で、視覚を奪われているブラインドサッカーは特異な競技です。だからこそ、引き込まれるだけの魅力がある。激しいボールの奪い合い、攻守にわたったボールワークは本当に見習うべきです。

 僕ら目が見える人間は、目隠しされたら手を前に出して右往左往するだけで、ボールの音が聞こえても1~2メートルの範囲でしか近づけない。見えている人だと、だいたいの感覚で『このあたりだろう』と音の方向に歩く。

 でも、彼らはボールの音がする、ぴったりの場所にまっすぐ向かう。そしてボールをぴたりと止める。そうでないと、シュートなんて打てない。ましてやドリブルしながら強烈なシュートを放つんだから、それだけでも見る価値がある。

 日常的な練習の積み重ねによるパターン化もあるだろうけど、普段から感覚を研ぎ澄ます方がもっと大事だと思う。イレギュラーな状況に対応するために」

(文中敬称略)
【了】

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