勝利への執着を見せたブラジル
「カンペオン・ヴォウトウ(王者が戻ってきた)」。世界王者のスペインからの快勝を目前に、マラカナンには7万人を超えるサポーターの誇らしげなコールが響き渡った。
世界最多のW杯優勝回数を誇るサッカー王国のメディアでさえも「史上最強」と賞賛する声が多い現在の世界王者との決勝戦。誰もが待ち望んだ今大会最高のカードでサッカー王国は「スペインが有利だとは思っていない。ここブラジルで我々自身がリスペクトされるようにプレーしなければいけない」と前日会見で、スコラーリ監督が話した通りの試合展開を披露した。
比較的涼しいベロ・オリゾンテでの準決勝から中3日で挑むブラジルと、蒸し暑いフォルタレーザで延長の末PK戦まで戦い抜いたスペインは中2日。コンディション的に王国の優位性は明らかだったが、決勝を前に王国の指揮官は改めて自らの哲学をこう披露した。
「結果は歴史の一部として残るが、美しい試合は過ぎ去ってしまうもの。好もうと好むまいと、これが私の哲学だ」。
そんなスコラーリ監督の思いを凝縮したのが開始早々の2分にフレッジが奪った先制点だ。「ゴール前ではどんな体勢でもゴールに執着するのがストライカーさ」と自らがこう語っていたフレッジの倒れ込みながらのゴールには、その後2点目を叩き出すネイマールのような華麗さは皆無だったものの、勝利への執着心が刻み込まれていた。
結果的にはブラジルが3対0で一方的にスペインを葬り去った格好に終わった決勝戦だが、ターニングポイントはゴールライン上で辛うじてペドロのシュートをクリアしたダヴィジ・ルイスの好プレー。マラカナンが「ダヴィジ・ルイス」コールに包まれたこのプレーなしに、疲労困憊のスペインにのしかかるネイマールのスーパーゴールは生まれなかった。