「守備でがんばろうという感じで入った」(久保)
それでも京都は同点に追いつかれた。メンバー交替が悪い方に出たのか、替えなかったとしてもいずれやられていたのか。
試合全体を振り返る久保は悔しさを隠さない。
「あまりよくない流れで、逆転したのはよかったなと思うんですけど、おれが入って同点に追いつかれたのは悔しいです」
──シチュエーション自体が難しかったかなと。相手の勢いがついている終盤の時間帯で。
「そうですね。でも、入ったときは2-1で勝っていたので、守備でがんばろうという感じで入ったんですけど、そこで失点したのは痛かったです」
──とはいえ、サイドに動き、後方にも顔を出し、守備に奔走した実感はある?
「そうですね。あまりうまくはいかなかったですけど」
アディショナルタイムに入って2分35秒が経過したころ、ハーフウエーライン手前でこぼれ球を拾った久保は右サイドから一気に前線へと駆け上がる。しかしその全力疾走と、そこまでの前後左右に激しく動く大胆なチェイシングが、久保からフィニッシュの精度を奪っていた。右足のシュートはゴール左へと逸れていく。
──カウンターでシュートを外したのは。
「完全にばてていました。この往復でだぁ~っとやって。あそこはヨコさん(横谷繁)に出して中に入ればよかったかなと、あとで思いました」
栃木の廣瀬が放ったシュートをオ・スンフンが掴むとタイムアップの笛が鳴った。87分以降、京都にゴールは生まれず、追いつかれての引き分け。久保が先発した前節でも終盤にゴールを許し、水戸ホーリーホックに敗れている京都にとっては、彼を快く送り出すためにも勝利が欲しかった。だが、その願いは叶わず、久保にとって苦い船出となった。
今季16試合7得点の結果を残し、久保は7月からスイス1部ヤングボーイズでプレーする。完全移籍だ。京都サンガF.C.から海外移籍を果たした下部組織出身選手は冨田晋矢に続く二人目。クラブの持つ育成力がどれほどのものかを証明する存在とも言えるだろう。