1点リードした場面で投入された久保裕也
「いやー、ほんまにうれしいですね」
京都から栃木グリーンスタジアムまで。自身の国内ラストゲームを見届けにきてくれたサポーターに、久保裕也は感謝の気持ちをあらわした。試合終了後はアウエー側ゴール裏に集った京都サンガF.C.のサポーターに「がんばってこい」と送り出され、「がんばります」と素直に答えた。
J2第21節、栃木SC対京都サンガF.C.。5位と4位、プレーオフ圏内にいる上位同士の対決は互いに負けられないという切迫感が張り詰め、勝利への意欲が横溢し、そこに久保裕也の国内ラストゲームというドラマが入り込む余地はあまりにも少なかった。
クリスティアーノと廣瀬浩二の左サイド攻撃から上げられたクロスを、ピッチのど真ん中で三都主アレサンドロが左足を振りぬき栃木が先制すれば、徹底したペナルティボックス内での揺さぶりから、誰もが意表を衝かれた工藤浩平のループシュートで京都が同点に追いつく。
その勢いをかって福村貴幸のフリーキックが、混雑した選手のあいだを縫ってゴールを陥れた。京都が逆転。しかしアディショナルタイム、今度はクリスティアーノの、そのままでもゴールに突き刺さりそうなフリーキックを廣瀬がフリック(頭でコースを変える)し、2-2として試合は引き分けに終わった。
双方が死力を尽くしたこの戦いで、久保がピッチに送り込まれたのは87分。京都が1-2と1点をリードしながらも追加点を奪う余力がなく、同点に追いつきたい栃木の猛攻にさらされていた、終盤の難しい時間帯だった。
安全な点差で最後の五分間を過ごさせようという交替ではない。1点差で負けていて、点を獲って追いつくための交替でもない。