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言葉にする前に選手の胸の内が分かる
――しかしチェルシーでは再び4-4-2へ回帰。その理由とは?
「極めて単純な話、それはミランで持っていたようなトレクアルティスタがいなかったからだよ。ランパードは実に優れたMFだが、しかし彼はあくまでもミッドフィルダーであってトレクアルティスタではないからね。だけでなく、あのチェルシーは両サイドが分厚く強靭で、前線にはいわゆる“ターミネーター”、ディディエ・ドログバを備えていた。要するに、あのチームには4-4-2こそが最も適していたわけだ。もっといえば、まさに理想的な4-4-2を可能にするメンバーがあのチェルシーには揃っていた、と。
もちろん、あの形がイングランドでは最も効果的だというのも理由の一つだった。戦術の細かなメカニズムを加味すれば、あの国では4-4-2はより効果的になる」
――そのチェルシーは09年から指揮されたわけですが、戦術面や習慣、環境といった面で総合的に、イングランドサッカーをどのように感じたのでしょうか。
「実に実に素晴らしい! と、そのひと言に尽きるのだろうね。そして、敢えて付け加えれば、我々イタリアのサッカー界はやはり、余りにも多くのことを彼らに学ぶ必要がある、と……。
トレーニングは“楽しみ”であるからこそケガも少なく、チームを覆う重圧もイタリアのそれに比べれば信じ難いまでに小さいし、無用の緊張がないからこそファンもまた思う存分スタジアムで楽しむことができる。
ただ、こと戦術という面では確かにレベルは極端に落ちる。選手個々のプレーも“考えたもの”が少ないというべきだろう。ポジショニングの精度が細かく問われることも少ない。したがって私がチェルシーで最も注意を払いながら変化と改善を求めたのはその部分だった。とはいえ、やはりサッカーを取り巻く環境すべてを見渡せば、ほぼすべての面でプレミアが遥か上を行っている」