ブラジルにとって相性のいいイタリア
サッカー王国には二種類のサッカーが存在する。1982年のスペイン大会でテレ・サンターナ監督が披露したようなフッテボウ・アルテ(芸術サッカー)と、あくまでも勝利という実利だけを追求するフッテボウ・レズウタード(結果のサッカー)だ。
2002年の日韓大会で母国を5度目の世界制覇に導いたスコラーリ監督が再登板した段階で、ブラジルが既に進む道は決まっていたと言っても過言ではない。
ドイツやイタリア系の移民が多い地域で、フィジカルコンタクトや闘争心をむき出しにしたサッカーを志向するのがガウショ(ブラジル南部出身者)。典型的なガウショのスコラーリ監督が目指すスタイルが、徐々に明らかになってきた。
ともに2試合を終えた段階で早くも準決勝へのチケットを手にしているブラジルとイタリア。ブラジルはメキシコ戦で足首を痛めたパウリーニョを欠く一方で、イタリアはデ・ロッシの欠場に加えて、司令塔のピルロを欠いてこの一戦に挑んだ。
奇しくもサンターナ監督の芸術サッカーが打ち砕かれた1982年大会の敗戦後、ブラジルは3勝3分けで一度も敗北を喫していない愛称の良い相手。立ち上がり攻勢に出たのはブラジルだった。
日本戦とメキシコ戦ではいずれも序盤にネイマールの得点で主導権を握っているカナリア軍団。ややスロースターター的な試合の入りを特徴とするブラジルではあるものの、今大会はキックオフ直後から出足の良さを見せている。この日も、笛の音から1分も立たないうちにフッキが猛然と迫りCKをゲットするなどイタリアを押し込みにかかる。
ただ、主力を欠くとは言え、プランデッリ監督のもと攻撃的なスタイルに転換したアズーリは、ユーロ準優勝の地力を見せ始める。
「イタリアは技術のある選手がいるからこそ、今のスタイルを体現している」と前日会見でスコラーリ監督が警戒したように、序盤の猛攻をしのいだイタリアとほぼ互角の展開が続く。