かつては代表戦でブーイングも
フッキ――。アメリカンコミック「超人ハルク」に由来する風変わりなアタッカーに対して、ブラジリアの開幕戦に詰めかけたサポーターが送ったのはそのパフォーマンスへの温かな拍手だった。
「僕は日本で様々なことを学んで成長した。特別な対戦相手さ」
18歳という若さでブラジルを離れたこともあり、母国での認知度では他の代表選手たちに引けを取るフッキ。コンフェデ杯開幕直前に行われたイングランドとフランスとの親善試合では試合中にしばしば、ブーイングを受けていた。
だが、3対0の快勝を陰から支えた背番号19は、ペレと並ぶ国民的英雄、ガリンシャの名を抱くスタジアム(エスタジオ・マネ・ガリンシャ)でついに王国の民に受け入れられたのだ。
フッキが言われもないブーイングの対象になったのはある意味で、無理もない。国民全員がブラジル代表監督とさえ称されるお国柄に加えて、フッキに定位置を譲る格好でベンチに甘んじるのはサンパウロでアイドルだったルーカスや、アトレチコ・ミネイロで売り出し中のベルナルドらほとんどのブラジル人がそのプレースタイルを熟知している選手たち。
「僕は若くしてブラジルを離れたので、国内でプレースタイルを知られていない」
達観した表情でこう語るかつてのJリーガーは、昨夏のロンドン五輪に続いて得たビッグチャンスに自らのサッカー人生を賭けている。