精神面の回復は容易ではなかった
――直前の2試合(W杯予選VSチェコ)、ブラジル入りして直後の親善試合(VSハイチ)の双方を引き分け。何よりプレーの質に極めて乏しい試合でした。
「その通り。ブラジル入りした翌日の対ハイチで確かに我々は醜態を晒してしまったが、まさかあれほどまでに酷い中身になるとは…。それでも、ある程度の困難が強いられることは当然のことながら織り込み済みだった。
そして昨日(16日)の試合、選手たちは実に見事な答えをピッチ上で見せてくれたと言えるだろう。もちろん完璧ではない。むしろ修正すべき点は決して少なくはない。だが、より重い課題が肉体的な面よりもむしろ精神面だった中で、我々の選手たちはプロとしてあるべき姿を見せてくれた。
(シーズン終了から)この1ヶ月という時間の大半を私は、選手たちのモチベーションを“取り戻す”ための作業に費やしてきた。大雑把に言えば、このレベルの選手たちの肉体的な疲労はおよそ1週間から10日で回復する。実際にコンディションを測る上での様々なデータは合宿の初日にしてほぼ想定した通りの値にまで戻っていた。
だが、問題は精神面。長いシーズンを終えて一度プツリと切れてしまった集中力、これを回復させるのは容易くはなかった。極めてありきたりな言い方だが、もう一度“充電”する必要が選手たち全員にあったからね。
もっとも、ブッフォンやピルロといったベテラン勢は、彼ら自身の豊富な経験則から自らの内面をコントロールする術を高い水準で備えているので心配はない。一方で、若い選手たちはその手段が未熟だからね。誰とは言わないが(笑)。
とまぁ冗談はともかく、大切なのはこれまでの“悪しき慣習”を可能な限りの範囲で改めることだった。我々のサッカー界は往々にしてこの手の(本番ではない)大会に際してモチベーションを欠く傾向が強かったんだが、それを私は絶対に看過しない」