ヒーローの誕生が観客増にもつながる
池田「ウチの場合は無料招待がほとんどから始まって、次にほぼ有料になって、また今無料招待も出てきました。そこが非常に難しい局面になっている。満員のスタジアムがなかなかできないのをどう立て直すかっていうのが今の課題だと思います。
やはり満員でものすごく盛り上がっているスタジアムを見ると、スポンサーも付いてくださります。ピークのときには世界的企業のマイクロソフト社が付いたんです。だから熱狂化したスタジアムを演出することができれば、世界マーケティングも可能なんです」
広瀬「そうですよね。だから満員のスタジアムで見るのと、テレビで見るのとでは全然違うと思います。満員のスタジアムには、それ自体にすごく商品力がありますね。
ただ、Jリーグの観客数は明らかに踊り場に入っています。しかも、毎年の観客の平均年齢が上がっています。ということは新規に、若い人が来ていないんですよ」
村林「これは数字でも出ていますね。2003年と2008年の比較で、22歳以下の観戦者が、約20%から約13%に落ちています」
池田「少子化で絶対対象数も減っているのでは?」
村林「それもありますが、東京で言うとそれは違うんです」
池田「あぁ確かに。東京は逆に若者が増えている。他の消費を抑えてでも行動させる為に何をしなきゃいけないかって大きな課題ですよね。今のJリーグで残念なのはヒーローがいないこと。最初の盛り上がった時期はJリーガーと有名女優が結婚したり、年俸も億単位でもらっていたのですが、今はそうじゃない。憧れの対象になりきれていないんですよ」
広瀬「年俸400万でプロって言われても、とは思います」
池田「Jリーガーの年俸を増やすためには、アジア戦略の中でアジアからの放映権料を取ってきて、それを象徴的な選手に使うことも1つの手段だと思います。年俸が2億や3億の選手を作る戦略を採る、それはメディアも含めてになりますが。そういうヒーローの誕生が観客増にもつながると思います」
広瀬「観客の話でもう1つ。イングランドってプレミアリーグが創設されるまでは、スタジアムに人が来ていませんでした。ただ、スタジアムが安全になったら家族連れが増えて、今アーセナルのシーズンパスは10年待ちですよ。だから子供戦略って大事だと思います。池田さんがさっき仰ったような、女性のサッカー好きを作っておいて、お母さんになった時に、子供をサッカーに向かせる。そういう戦略は中長期的にはあるだろうなと」
池田「それは将来的な提案の中でいくつかあっていいと思いますが、まず放映権料ですよ。Jリーグが持っている権利を、リーグが成熟していったときにチームに渡せるかどうか。今ヨーロッパが盛り上がっているのは、チームに放映権を渡したんです。Jリーグが成熟してきたときにはそういう戦略もあるかもしれない」
村林「そのタイミングが今がいいのかどうかというのはありますが、分配する額は問題だと思っています。クラブの数を40に増やすとしたときに、トータルの額(リーグの収入)が変わらないまま分母が増えたたため、1クラブ当たりの(分配)額を減らしたのは大間違いだと思います。クラブ数を増やしたのは日本中にサッカーを普及しようという目的でしょう。それなのに分配金を減らしてきちんとした普及ができるのかは疑問です」
池田「それは確かにそうだね」