カズをCM起用するメリット
カズは、経済効果でも“キング”であるらしいことは永濱氏の話で理解できた。ただし「選手のブランド価値を判断するうえでは、経済効果よりもCMなどの方が実際の数字でわかるから明快だと思います」という言葉が頭に残った。そこで、CMの専門家の視点からもカズの価値を計ってもらうことにした。1989年からCMの好感度理由などを調査しているCM総合研究所に取材を申し込むと、専任研究員の関戸晶子さんが取材に応じてくださった。
カズは91年、日本サッカー協会のCMでデビューした後、『サントリービア吟醸・殻破りビール』に出演する。これは日本プロサッカー選手として初のCM出演である。以来、『サントリー・デカビタC』(92~98年)など20本以上のCMに起用され、今年も『ACジャパン 今、私たちにできること』や缶コーヒー『ジョージア ヨーロピアン コクのブラック』のCMに登場している。
「本数的には、サッカーでは中田英寿氏の方が多いですし、さらにいえば、最近では石川遼選手や浅田真央選手などの方が圧倒的に多いのですが、三浦知良選手はスポーツ選手としてトップクラスの影響力を持つと思われます」と関戸さんは分析する。
スポーツ選手の場合、石川選手や浅田選手、北島康介選手など個人競技の選手の方がCM出演本数は多いという。推測するに、チームスポーツに比べ個人競技の選手の方が様々な面で起用しやすいのだろう。同じくチームスポーツの野球は近年勢いがなく、野球選手はサッカー選手以上に露出が少ないという。そんな状況の中、カズをトップクラスと分析する関戸さんの話にさらに耳を傾けてみる。
「三浦選手はとても息が長く、年齢やキャリアに合ったCMに起用され続けてきています。サントリーのデカビタCの頃はJリーグブームもあり、タレント性も高かった。このCMは『バモラ!』(ポルトガル語で「let’s go!」の意味)というセリフでも話題となり、CMオンエアの月別トップ10にも入りました。ジャニーズのタレント並みの影響力があったと考えられます。その後、30歳を過ぎると『まだまだ、これからだよ』(パイオニアDVDレコーダー)とか『ずっと走っていたいんだ』(マニュライフ生命保険)というベテランらしいセリフをCMで口にしています。一方で、今年のジョージアのCMのようにコミカルなキャラクターも演じられる。その演技の幅の広さは、スポーツ界きってだと思います。当然、支持層も幅が広く、クライアントも使いやすい選手ですね」