カズと中田英寿の比較
それは、Jリーグの誕生とともに生まれ、日本のプロサッカーをけん引してきたパイオニアにしか手に入れられないポジションとも言える。ひとつの時代が生んだ選手であり、それこそがカズ最大の価値なのではないだろうか。いつの時代にも、その時代でしか存在しえない選手がいる。例えば、プロ野球の長嶋茂雄と王貞治、いわゆる“ON”は、日本中が高度経済成長にわく右肩上がりの時代とともにあったヒーローだ。今後、彼らのように支持される野球選手は出現し得ないと考えられるように、カズのような存在も今後、日本サッカー界には現れないのではないか。
日本サッカー界といえば、忘れてはいけない人物がいる。そこで、彼とカズとの比較を永濱氏にお願いしてみた。中田英寿である。
「彼はもう1人のパイオニアだと思います。選手としては中田氏の方が成功しましたけど、経済的な影響力という意味では甲乙つけがたいですね。中田氏の場合は、日本国内というより海外でもいろいろ活動をしているので、そっちの方も大きいと思います。一方、三浦選手は未だに日本国内で横浜FCの観客動員に貢献している。中田氏が日常そういうことをやっているかというと、そうではない。
そんな点からすると、中田氏の方が三浦選手より上とか判断はできないと思います。2人の生き方は対照的ですね。片や、まだまだ現役でプレーできるのにすっぱりと辞めて、片や最後まで現役にこだわっている。だからこそかち合わない部分があって、三浦選手が好きな人によって経済効果が生まれ、中田氏みたいなスマートな生き方に共感する人は彼に憧れ、そこでも経済効果が生まれている。ある意味、棲み分けができているかなと思います」
それでは日本のスポーツ選手の中で、カズの経済効果はどれくらいの位置にあるのだろう。
「間違いなく、日本の選手の中では高い位置にいますね。少なくともサッカー界を代表する選手の1人ということは間違いないですから。いろんなスポーツの代表的な選手と比べてもトップクラスだと思います。単純にCM出演数から考えれば、現役の本田選手とか長友選手とかの方が今は上なのかもしれませんけど、彼らは今後の活躍次第ですね。
三浦選手は日本のプロサッカー誕生とともに出てきた特別な価値を持つ選手。これからの選手は、海外で活躍しないとカリスマ性を出しにくい。カズはヨーロッパでは成功できなかったし、W杯にも出られなかったけれど、今でも人気を集め、カリスマ性を発揮している。おそらく彼みたいなポジショニングの選手、商品価値のある選手は今後出てこないと思います」