カズと中田の棲み分け

　具体的なカズの経済効果を試算するのは難しいとして、カズの持つ経済効果というのは大体どれくらいのものなのか。例えばゴルフの石川遼がプロになったとき、その経済効果は200億とも500億とも言われたが、彼と比べてカズの価値はどうなのだろう？　再び、永濱氏に質問をぶつけてみる。

「イチローとか石川遼って、ある意味成功者ですよね。だから『石川遼が頑張っているからオレも頑張ろう』という感じではなくて『すごいな』と感じる。一方、三浦知良選手はあそこまでボロボロになっても現役にこだわって頑張っている。だから『カズも頑張っているから俺も頑張ろう』みたいな気持ちになる人が多い。

　そういう意味で、イチローや石川遼とは違う逆境のヒーローとしての価値が三浦選手にはあると思います。だから、石川遼の方がCMにたくさん出ているからといって、単純に彼の方が価値があるとは言えない。CM契約料だけじゃ計れない価値というものが、三浦選手にはあると思います」

　考えてみれば、カズは波乱万丈の選手生活を送ってきた。ブラジルへ渡ってプロになり、帰国後は読売クラブ、ヴェルディ川崎でプレー。同時期には日本代表にも選ばれ、Jリーグ開幕と同時にブームの中心となる。そこまでは彼も成功者だった。しかし、大きな注目を集めて移籍したセリエAのジェノアではわずか1シーズンのプレー。その後、W杯には出場できず、日本代表からも遠ざかる。同時にクラブではタイトルとも縁がなくなってしまう。現在のカズは決して成功者ではない。それでもカズは価値を持ち、それなりの経済効果を与える存在として活躍を続けている。つまり、きわめて特殊な存在なのだ。