カズで経済効果は生まれるのか?
まずは「カズが及ぼす経済効果とは、どんなものなのだろうか?」という基本的なところから尋ねてみる。
「経済効果には直接効果と間接効果がありますが、本当の意味での直接効果というのは、三浦知良選手が出ている試合に、彼を目当てにお客さんが来ることによるお金の流れですね。例えば、横浜FCの試合会場に行くまでの交通費、遠くから来た人は宿泊費を払っているかもしれない。さらに三浦選手のグッズが売れたりとか、そういったものが直接効果になるわけです。
間接効果だと、彼が愛用している服やグッズが売れたりとか、CMに出演することによって商品の売り上げが伸びたりとか、そういうことがあります。あるいは、経済学的な間接効果という意味では、先ほど申し上げたようにお客さんが試合会場に訪れたりすることによって、お弁当を買ったりしますよね。そうなると、その川上産業として食品会社とかの利益が上がります。そういうのも間接効果と言います」
永濱氏の解説を聞きながら、ふと疑問に思う。これだけいろいろな要素がからんでくると、試算もいろいろなやり方が出てくるのではないか、と。実際のところ、どこまで含めて試算するかは人それぞれ、ケース・バイ・ケースなのだという。直接効果に関しても、交通費を含める人もいれば、含めない人もいる。試算者の考え方次第で数字は変わってくる。結局のところ、厳密な答えはないというのが経済効果というものの本質らしい。
とはいえ、ある事象が起きたことでどれくらいのお金が動くかだいたいわかる、という意味での信ぴょう性は確かにある。夏季オリンピックやW杯では実際に数千億単位のお金が動くのだが、具体的な数字はともかく、試算によって「●千億」というある程度の効果のイメージはつかめる。そして、それに基づいて自治体や企業は活動を行える。こうした役割を経済効果の試算は果たしているわけだ。
そんな前提のもと、サッカーの経済効果について論じると、W杯は夏季オリンピックと並ぶ世界的な景気循環をつくり出すビッグイベントだという。特に、デジタル家電の需要が世界的に盛り上がることによって起こる製造業の活況は、世界経済に大きく影響する。「ロンドン五輪とブラジルW杯は、世界的な不況の救世主になり得るのではないか」と永濱氏は語る。
一方、国内リーグでは、サッカーはプロ野球に次ぐ経済効果を持っているという。おそらくプロ野球の6掛けぐらいではないか、というのが永濱氏の見解だ。
ただし、プロサッカー選手個人の経済効果を計算するのはイベントの試算よりも難しいという。個人は様々な活動を行っているからだ。「選手のブランド価値を判断するうえでは、経済効果よりもCMなどの方が実際の数字でわかるから明快だと思います」と永濱氏は指摘する。