たとえば5分過ぎ(図5分10秒)。ブラジルが巧みに右サイドを崩し、フッキにボールを渡す。フッキは長友に1対1を仕掛けながらも、中央の様子を確認してラストパス。ゴール前でほぼフリーで受けたオスカールがボレー。これはゴールを大きく外れた。「フッキはドリブルで仕掛けながら、日本の両センターバックの間のスペースを見つけた。
見つけるフッキもすごいんだけど、僕が考えるゾーンディフェンスはボール(フッキ)を中心として、その次に味方の位置で決まるのだから、吉田はもっと今野に近づいて間のスペースを埋めないといけない。あるいは、瞬時に長谷部がその穴に飛び込んで埋めるか。吉田はマンツーマンの意識が強いのかなあ。ネイマールは内田に任せればよかったと思うんです」
ブラジルとの差を埋めるために必要なこととは
今野や吉田はなぜマンツーマン気味で守っていたのだろうか。普段クラブでマンツーマンならば「慣れが出てしまう可能性はある」と指摘する。ましてや相手はネイマールやフッキだ。90分間ギリギリの対応を迫られていたことは想像に難くない。
かくして日本はブラジル相手に早々に0-2という絶望的なスコアに追い込まれた。その後はブラジルのカウンターの嵐に晒される。
「なぜあれだけのカウンターを受けたのか。ブラジルの守備意識はずっと高かったんです。エリア内にDF4枚、MF4枚がくっつくように壁を作ってしっかり守っていました。日本はポゼッションができても、その壁に向かって勝負のパスを入れ過ぎて、カウンターを受けた。もっと揺さぶって壁がバラバラになったところに勝利のパスを入れたり、少し遠目からでもシュートを打ったりできたはず。
後半、酒井宏樹がブロックの背後をとってダイレクトで折り返したシーンがありましたよね。ああいう攻撃の回数をもっと増やすべきでした」
日本は堅守ブラジルを最後まで攻め崩すことができず、後半にイージーなミスから失点を重ねて0対4の大敗を喫した。フランス戦の劇的勝利で期待が高まっていただけに日本中が沈み込んだ大敗。それでも松田監督は「やりようによってはそれほどの差はなかったのではないか」と感じている。
「もちろん最後は絶対的な差は見えましたよ。0-2や0-3以降は、ブラジルは気持ちにも余裕が出て何でもできます。スペースを与えてカウンターとなれば、身体能力やストライカーの質の差がはっきりと見えてしまうもの。
でも、ブラジル人だって人間ですから負けることへの恐れはあります。0-0のときは大胆なことはできない。実際、いまや世界有数のセンターバックであるチアゴ・シウバ(3)が、試合の立ち上がりにあれだけのミスをしているわけです」
前半の1分50秒、ブラジル陣内の右サイドで、本田と中村のハイプレッシングを受けたチアゴ・シウバが簡単にボールを失った場面。「あのときのブラジルは日本を食いつかせていたのではなく、日本の攻撃をリスペクトして必死だった」と見ている。