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ブラジル戦プレイバック 日本代表の守備はなぜ崩壊したのか?(前編)

text by 鈴木康浩

どちらが正解かはない

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遠藤が慌てて帰陣するも、フリーになってしまったパウリーニョ(5)へオスカールからパスが出てミドルを被弾。遠藤と香川が適正なポジショニングなら防げた可能性も。

 これならばパウリーニョはシュートを打てない。ところが実際は図11分47秒の通りだ。オスカールに対して慌てて遠藤が捕まえにいく。オスカールはすかさずパウリーニョへパス。目の前が空いているパウリーニョはトゥキックで右足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。香川も慌てて後方からシューターにアプローチしたが間に合わなかった。

「相手のシュートもうまいと思いますよ。でもゾーンディフェンスのポジションをしっかりとっていればシューターにも、その前のパスを出した選手にもアプローチに行けていたはずです。内田のミスがなければ、こういうポジション取りの問題が明るみにならないんです」

 松田監督はこのゴールを見たとき、一昨シーズンのCL決勝、バルセロナ対マンUのメッシのゴールシーンを思い出したという。

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似たような場面は欧州でも見られる。松田監督が例に出したのは一昨シーズンのCL決勝。メッシがフリーでボールをもらいドリブルからゴールを奪うが、ギグスが中に絞っていれば防げたかもしれない。香川とギグスを重ね合わせ、「守り方が違うので一概には言えないが、マンUでは中へのケアという指導はあまり行われていないのでは」とも。

「(ブラジル戦の香川のポジションに該当する)マンUのワイドミッドフィルダーがバルサのウィングバックについて行ったんです。でも、僕の考えだとそうではなくて、ボールが真ん中にあるのだから中を優先して絞らないといけない。そうすればメッシにあんなシュートは打たれなかったはずです」

 あとで映像を確認したが、確かにメッシのシュートシーンで、ワイドミッドフィルダーのギグスが、中央の守備ではなくボールとは逆サイドのケアに腐心していた。この場面でマンUは最終ラインが6枚、中盤が2枚という状態となり、イニエスタから横パスを受けたメッシに対し、ボランチの朴智星が振り切られ、ほぼ中央から打ち抜かれたのだ。ワイドミッドフィルダーが中に絞っていれば防げた可能性のある失点だった。

「香川がマンUだから、普段から守備では中に絞らず、ボールとは逆サイドをケアするように言われているのかなと。もちろん(人によってやり方は変わるので)どっちが正解なんてありません。それにザッケローニ監督が実際にどう考えているかは僕にはわからないです。僕が言っていることはまったくの的外れで、実際に香川がいたポジションは攻撃のためにリスクを負ってでもとっているという可能性は十分にあります」

【後編に続く】

初出:サッカー批評issue59

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