ブラジルの上がりの方が速い
「この場面、僕は日本の戻りが遅いと思う。ブラジルの上がりの方が速い(図3分03秒)」
吉田と内田がネイマールの突破を遅らせているうちに帰陣したのは長谷部(17)と今野(15)の2人だけ。一方、ブラジルは後方から4人が次々と駆け上がっている。
「ネイマール(11)にボールが出た瞬間は2対1の数的優位。でも次の場面では4対5の数的不利。どれだけブラジルの上がりが速くて日本の帰陣が遅いかということですよ。この辺りが、日本はブラジルをちょっと甘く見てない? と思うんです。ブラジルのカウンターは天下一品なのに」
この場面で少し映像を進めると、すでに帰陣している4人の次に戻ったのは本田だった。
「本田はボールを奪われた責任感もあるんだろうけど、僕は彼に守備意識の高さを感じる。ブラジル戦はゼロトップのような1トップだったけど、攻撃だけの“王様”という感じはなかった。ボールを奪われた場所には本田以外に、遠藤も長友も香川もいたし、中央で一番自陣に近い場所にいた中村(14)は本田に追い抜かれている。
ゾーンディフェンスであれ、マンツーマンであれ、カウンターの局面ではいかに早く十分な数の体を帰陣させるか、それだけでしかないんです。僕はその意識付けを促すためにDのポジションの重要性を選手に伝えている。ペナルティアークがDの形をしているから僕はDと呼んでいるんだけど、DF3枚とボランチ1枚で3と1の形をつくる。
クロスに対してこぼれ球を拾われてズドンなんて場面があるからDを抑えるわけです。カウンターの局面ならば『誰でもいいからDに帰れ』と。
中村を責めているわけではないけれど、たまたま自陣に一番近かった中村が必死に帰っていたら(この場面の最後のボールホルダーとなったラミレス(7)に)ディフェンスにいけていた可能性がある。
この場面はゴールを奪われなかっただけで大ピンチですよ。フランス戦は序盤から劣勢だったから帰陣しないと大変なことになるのがわかっていた。でもブラジル戦は序盤がかなり良くて『今日の俺たちはやれるぜ』という感じがあった。この場面を見る限り、やられないだろう、という守備意識の希薄さが見えるんです」