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中田英寿 その理想、高きがゆえに

『サッカー批評』での連載をまとめた書籍『Hard After Hard かつて絶望を味わったJリーガーたちの物語』から、中田英寿が主催するTAKE ACTIONの練習試合の模様を、一部抜粋して紹介します。

text by 大泉実成 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

 フィールドにいる中田を見るのは、やはり一つの快楽だった。

 4月2日木曜日、埼玉スタジアム第3グラウンド。恐ろしく風の強い日だった。

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中田英寿【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 第3グラウンドってどれなのよ、などと言いながら目の前に見えるグラウンドに入っていくと、左手すぐに、髪を短く切った中田がいた。中田は選手たちと楽しそうにしゃべりながら入念に足首をストレッチ、それから澤登(正朗)とパス交換を始めた。インにかけたりアウトにかけたり、時折パスミスすると天を仰いだり、サッカーをとてもリラックスして楽しんでいるように見えた。

 流通経済大学との練習試合。ゲームが始まると、大学生たちはガツガツと容赦なく中田に当たりに行った。おいおい、おじさんチームは大丈夫なのか、と心配になる。

 しかし、先制したのはTAKE ACTION F.C.の方だった。大学生の攻勢をいなしながら中田が出したパスを、堀井(岳也)、松原(良香)がつないでの先制である。見事なカウンターだった。

 これぞ中田、というパスは健在だった。ええっ、という意外な角度に意外なタイミングで強いパスが打たれるが、そこにはちゃんと走りこんでいる選手がいる。あいかわらずの視野の広さだった。

 数分後、大学生チームもスルーパスから1点を挙げる。これで面白くなったきた。

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