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サー・アレックス・ファーガソンの奇妙な冒険〈番外編〉「彼はどこにでもいて、どこにでもいる」第五回

今季で勇退し、27年間にもおよぶマンチェスター・ユナイテッドでの監督生活に別れを告げたサー・アレックス・ファーガソン。彼の栄光の足跡と知られざる実像に迫る。

text by 東本貢司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

【第四回はこちらから】

シャルケからモイーズへオファーがあった!?

 アレックス・ファーガソンの突然の勇退発表には、結果的に後任として指名されたデイヴィッド・モイーズの、“保留状況”と同期した結果、引き出されたような節がある。無論、仮説にすぎない。だが、仮説の世界にさらに踏み込んでみると、そもそもの時点でこのバトンタッチは「ファーガソンの意志に基づく」規定事項だったようにも思えるのだ。

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優勝パレードでインタビューを受けるファーガソン【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 モイーズ就任決定の直後、ファーガソンはモイーズについて「彼には(わたしと似通った)フットボール観と仕事に対する確固たる倫理観がある」と述べている。(  )内は筆者の“注釈”だが、要するに、あたかもモイーズの中に自分の分身を見ているような印象評価を口にしたのだ。つまり、後継ぎはこの男だとあらかじめ決めていたかのように。

 モイーズはなぜか今シーズンで切れるエヴァートンとの契約について、更新延長の話し合いをためらっていた。つまり「保留」していた。素直に考えれば「チャンピオンズリーグないしはヨーロッパリーグ入り」の可否を待って、交渉に臨む腹積もりだったとも考えられるが、やはり異例の保留だ。

 それに、一つだけ気にかかることがあった(誰が・・・・ファーガソンが?)。確かな筋の情報から、ドイツ・ブンデスリーガのシャルケがモイーズ招聘を検討しているという話が伝わっていたのである。そしてモイーズ自身も「ドイツで指揮を執ることに関心がある」と、あるメディアの問いに漏らしていたばかりだった!

 さて、どうだろうか。今度こそ素直に(?)この「1+1」(契約延長保留+ドイツの話)が、サー・アレックスの心を騒がせ、動かす誘い水になったとは考えられないか。もちろん、それが事実だったかどうかは、今となってもどうでもいいことなのだが。

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