攻撃スタイルに新機軸をもたらす可能性を秘める高橋秀人
冷静な現状認識かもしれない。しかし、残り1年を考えても状況を変えるには、この6月で自身の存在価値を強烈に示していく必要がある。そのためのヒントはザッケローニ監督が豪州戦の後に語った「もっと相手の裏を突くことを増やしてもいい」という、まさしく“攻撃のベクトル”についての要求ではないか。
日本代表は得意のボール回しから相手の守備を崩すスタイルが基本となっているが、しばしば攻撃が遅攻に偏ってしまいがちだ。それが完璧なまでにはまれば守備を固める相手を崩すことも可能だが、世界で戦うには、さらに速い攻撃を織り交ぜていくことが重要なのではないか。
そのことに関して高橋は「“ボールを絶対に失わないこと”と言いましたけど、やっぱりチャレンジすることで相手の背後を突く部分だったり、受け手と出し手の関係性で、もっと相手の脅威になることをしていかないといけない」と語った。
“攻撃のベクトル”を現状より前へ定めること。それこそが“勇気とバランス”を掲げるザッケローニ監督にとって、理想的なボランチの指標ではないか。信頼は厚いものの、長谷部も遠藤もまだ実現できていない日本の攻撃スタイルに新機軸を生み出せることができれば、序列は変わりうるはずだ。
Jリーグに視野を広げれば、現在の主力2人と細貝の他にも、山口螢や扇原貴宏(セレッソ大阪)、柴崎岳(鹿島)、そしてFC東京の同僚である米本拓司などライバルは多い。「Jリーグでも良い若手が育っているので、良い競争になる」というザッケローニ監督の言葉にはボランチのポジションも含まれているはず。
その意味では「崖っぷち」と現在の心境を表現する高橋にとって、今回は大きなチャンスでもピンチでもある。だからこそイラク戦からコンフェデにかけて、主力と同等に、現状では4番手のボランチにも注目したいと考えているのだ。
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