【前編はこちらから】 | 【サッカー批評issue56】掲載
欧州に散らばる協会も把握していないタレント
――ブラジル開催である、次のW杯はあなたにとっても特別です。
「そうだね。母国で開かれるW杯に出ることは、強いモチベーションになっている。監督業を再開すると、またメディアにぼくの名前が取り上げられるようになった。サッカー界で注目されて、身が引き締まる思いだよ。
イラク代表の選手たちは、日々のまともな生活を送ることも困難だ。そうした選手をW杯に連れて行きたいという気持ちは強い。
確かにイラクの状況は良くない。ただ、日本に勝っている面もないわけではない。アジアの中で、イラク人は体格的に抜きんでている。さらに技術もある。
日本にあるようなトレーニングセンターがあれば、どれほどいい選手が出てくるだろうかと思う。もちろん、そうしたものがないから、彼らの戦おうという強い気持ちがあるんだけれどね」
――イラク国内リーグは運営されているんですか? そしてそれを視察しているんですか?
「20チームのリーグがある。草サッカーをやるような土のピッチで試合をしている。ぼくは1試合も観に行っていない。全部ビデオだ。エドゥーとモラシー(・サンターナ、フィジカルコーチ)は現地で観ている。ただ、現在代表に呼んでいる以上の選手はいないだろう。
それよりも国外に散らばっている選手に注目している。18、19才のイラクの国籍を持つ選手が欧州各地でプレーしている。困ったことに、その選手たちを協会は把握していない」
――欧州のクラブでプレーしているんですか?
「そうだよ。色んなところにいる。ビッグクラブではないけどね。多少知られているのは、年齢別のオランダ代表に選ばれている選手だ。オランダの国籍も持っているから、A代表に呼ばれるとイラク代表の権利は失ってしまう。ただ……(笑いながら)ぼくならば、オランダ代表を選ぶだろうな。
あとはスウェーデンにいいセンターフォワードがいるらしい。彼も二重国籍で、どちらの代表を選ぶか迷っている。ぼくと話したがっているんだ」
――まだ若い選手?
「21、22じゃないかな。まだスウェーデンでは代表に選ばれたことはないが、可能性はあるらしい」
――イラクを選べと説得するんですか?
「まずは実際に彼のプレーを見てからだな。イラクを選んでくれても、代表に呼ぶかどうかは約束できない。他にもイングランドやデンマークでプレーしている選手がいた。
今は、『YouTube』でそうした選手の映像を検索することができる。ぼくらが探してリストを作って、協会にコンタクトをとってもらっている。近々、欧州で集めて実際に自分の目で見るつもりだ」