困難でも前を向き突き進む
――なんでわざわざイラク代表監督というのがぼくの感想でした。
「ぼくだって、中国、アラブ首長国連邦、イラクの3ヶ国から選べと言われたら、中国を勧めるだろうね。
中国のサッカー関係者は、日本を真似ようとしている。かつての日本と同じようにビッグネームを欲しているんだ。
そう言えば、三次予選で中国に行った時、トルシエと会ったよ。ぼくたちの泊まっているホテルまで会いに来てくれたんだ。彼はどこかのクラブの監督をやっているんだろ? 岡田(武史)も中国のクラブチームの監督になったよね。
実はイラク代表監督就任後、サウジアラビア代表監督の打診を受けた。イラクに比べるとずっと恵まれた環境だった。
しかし、ぼくはイラク代表として次のステップに進むつもりだと断った。三次予選は中国と同じ組だったし、敗退する可能性も低くなかった。
ただ、一度引き受けたのだから、最後まで全うしたい。困難でも前を向いて突き進むしかない。人生とはそんなものだよ」
――あなたはそういうのが好きですよね。
「(苦笑いして)今のイラク代表は、困難を乗り越えてきたチームであり、経験ある選手が残っている。今のチームのうち、10数人は30才過ぎの選手だ。
日本代表と試合(2004年2月12日、国立競技場)をした選手が残っている。覚えているだろ? あの鹿島の合宿で寿司を投げた事件(通称『キャバクラ事件』)があった頃だよ。
彼らは2004年のオリンピックには出場しているが一度もW杯に出場したことがない。今回の予選が最後のチャンスになるだろう。だからこそ、モチベーションが高い。
ただイラクは年上を尊重しすぎて若手が萎縮する傾向がある。経験ある選手の中にうまく若手選手を混ぜながらチームを作っている」