CFを2人で見るCB。組み立てに参加できる一方で…
(攻)「低い位置から組み立てろ」
「+1」、つまり数的有利な状況というのは、選手にとって「プレーが簡単な状況」である。CBがボールを保持している際、CBが2人に対してCF(センターフォワード)は1人しかいない状況のために、本来なら低い位置でボールを持つのはリスクも伴う。
だが4-3-3同士だと、CBは余裕を持ってボールを保持することができる。結果として組み立てに参加することが簡単になり、CBの組み立てへの積極的な参加が見込まれる。それが、CBの組み立ての能力の向上につながるのだ。
(守)「1人のCFを2人のCBで対応しろ」
試合の流れで変わりはするが、基本的に数的有利で守るためにCF一人に対してCB2人が「対人役」「カバー役」と役割を分けることになる。つまりCBは数的同数で、「カバーしながら、人を見なければならない」という状況に慣れずに育つことになる。
結果として、スペースをカバーしなければならない局面でボールだけを見て裏を突かれる状態、所謂『ボールウォッチャー』になるCBが出てきやすい傾向にある。
オランダでは攻撃的な選手を数多く輩出するのに関わらず、数的同数に対応出来るCBが出てこず、国際大会で結果を残せない傾向がある。これは、こうした育成環境が影響しているのではないだろうか。
日本にトップ下気質のSHが多いワケ
(攻)「SBは低い位置から組み立てのみを行い、高い位置でボールを受けたWGは必ず対面の選手を抜け」
オランダのSBには、基本的にオーバーラップの回数は少ない。もちろんトップレベルになるとWG単独でのドリブル突破は難しくなるので、SBが攻め上がることも多々ある。
しかしながらオランダの育成年代の基本指針は、SBがオーバーラップしないことでWGのスペースを使わず、縦も横も単独で突破させることでウイング育成の傾向を強めようとしている。バイエルン・ミュンヘンのアリエン・ロッベンは、その育成方針が産んだドリブルに特化したWGの典型例だ。
これは、日本との最も大きな考え方の違いではないだろうか。日本で良く聞くセオリーとして「SBはSH(サイドハーフ)を追い越し、数的有利を作りサイドを崩せ」というものがある。しかし、これは考え方次第では、SHがドリブルのみで相手を突破する機会が減少することを意味している。
そして同時に、SHにはパスという選択肢が増えることも意味する。日本のサイドの選手がどこかSBを使うパスありきのドリブルで、典型的なWGが少なく、トップ下気質でのSHが出てくるのはこういう指導背景があると考えられる。
しかし、これは決して日本の『課題』というわけではない。このトップ下気質のサイドの選手は数多くの選手が欧州でプレーして、高い評価を受けている。また上下動を何度も繰り返す勤勉なSBも、同様に多く欧州のクラブに受け入れられている(高い評価を受けている)。これは課題というより、日本の一つの強みと捉えて良いだろう。