異端のリーダー
本田の自己主張の強さもまた、日本人離れしているというふうに見られている。
本田の自分の見せ方は、いくぶん演出的に感じるけれども、それも含めて確信的だ。
日本のような均質性の強い社会では、変わり者は疎外されやすい。ところが、本田ぐらい突き抜けてしまうと、かえって大きな力になる。
ナショナルチームは、さまざまな個性を持った選手の集団でありながら、それぞれの国なりに均質性がある。ブラジルはブラジルらしく、ドイツはドイツらしい。
ただ、より強いチームに進化するには、周囲とは明らかに違うタイプの選手が核になることがある。
流麗なブラジルでは、無骨なドゥンガが長い間リーダーだった。闘争的なドイツは、優雅なベッケンバウアーがキャプテンのときに黄金時代を築いている。
その国らしくない個性がリーダーとして台頭すると、全体が引き締まる効果があるのかもしれない。甘さを引き立てるための、ひとつまみの塩のようなものだろうか。
日本代表のキャプテンは和の良心を代表するような長谷部誠だが、異端児的な本田の個性はいいスパイスになっている。
アスリートは誰でも野心的なものだが、それが剥き出しの本田は、チームの進むべき方向を力強く指しているようにみえる。
生粋の変わり者というより、ともすれば収まりがちな自身の殻を意図的に打ち破っていこうとする力を感じる。冷静で実は洗練された荒々しさだ。そして、日本人の集団にはたぶん必要なものなのだ。
【了】