ただ一人のサッカー小僧として
今後のキャリアも考えて、一番良い形で身を引ける時、それが今だった。PSG、そしてカタールとは太いパイプもでき、それは今後の活動をもバックアップしてくれる。将来への道筋も整った、素晴らしい引退劇だ。
とはいえ、これだけは断言できる。
彼は、世界的なセレブである前に、サッカーが好きで好きでたまらない、一人のサッカー小僧だった。
兼ね備えたルックスのおかげでイメージだけが膨らみ、それが時に彼のサッカー選手としての評価を邪魔したが、彼は一人の純粋なフットボーラーだった。
「ハードワーカーな選手だったとして記憶されたい」
という言葉を彼は残した。
足が速くないから、それをなんとか補おうとプレースキックの技を磨くことを決めた彼は、毎日居残って500本のFKを蹴り、試合中は、運動量だけは誰にも負けるまいと、90分間走り続けることを自分に課していた。
美形のスーパースターである前に、デビッド・ベッカムはフットボールを愛してやまない、偉大なる努力と闘魂の人だった。
【了】