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ベッカム引退劇に潜む“金銭問題”――。それでも称えるべきサッカー選手としての素顔

text by 小川由紀子 photo by Ryota Harada

「ベッカム」という商品

 そしてもう1つの、そしておそらくもっとも重要な要素が、彼の今後を左右する、「コマーシャル的価値」だ。

 今季で身を引けば、彼には「まだ十分やれる状態ながら、タイトルとともに戦場を去った」という美しいイメージが残る。ただ、仮にあと1年現役を続けた場合に同じシナリオが手に入るとは限らない。

 PSGが優勝できる保証もなければ、怪我の可能性もありうる。現役アスリートという看板を失うベッカムにとって、最も大切な資本は、金品よりもむしろ「イメージ」だ。

 前述のインタビューの際、前々から写真撮影の許可を確認していたにもかかわらず、ベッカムのエージェントから、インタビュー写真の使用を禁じられた。

 理由は、「練習後にシャワーを浴びた姿で、きちんとセットできていないから」

 ベッカムは映画俳優ではなくアスリートだ。シャワー後の姿など、最も“生っぽく”て良い。それに、元々超イケメンである。ニットキャップを被ろうと寝起きだろうと十分にカッコいいのだ。

 しかし、この一件が現実を物語っている。

 すでにベッカムは、彼一人の意思で動けるステータスにはいない。マネージメントやガードマン等々、彼に関わるスタッフはおそらく100人を超える。彼自身が『ベッカム・エンタープライズ』なのだ。

 その職員たちの生活をも担っている以上、それなりの責任がある。自分の商品価値を下げるような行動は、もはや彼の一存ではできない。

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