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サー・アレックス・ファーガソンの奇妙な冒険〈番外編〉「彼はどこにでもいて、どこにでもいる」第二回

今季で勇退し、27年間にもおよぶマンチェスター・ユナイテッドでの監督生活に別れを告げたサー・アレックス・ファーガソン。彼の栄光の足跡と知られざる実像に迫る。

text by 東本貢司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

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ユナイテッドでの栄光の前にあるアバディーンでの偉業

 アレックス・ファーガソンが正式にマンチェスター・ユナイテッドの監督でなくなるのは今年の6月30日である。遡って就任は1986年11月6日。つまり“偉大なるファーギー”のユナイテッドにおける正確な任期は「26年と8か月弱」ということであり、その名声も、この「26年余」に成し遂げられた業績に集中して語り継がれることになるだろう。

 しかし、我々は忘れている。さもなくば、記録の文字と数字のみをざっくり読み飛ばすだけで、ほとんど気にも留めない。だが、スコットランド、アバディーン監督時代のファーガソンとその業績について知らないということは、彼のことを何も知らないに等しい。なぜなら、ファーギーの為人(ひととなり)とユナイテッド到来後の成功は、この、ブリテン島辺境の地にて、すでに証明され、“約束”されていたと考えるべきだからだ。

 ファーガソンが在任した約7年間(1978~86)、アバディーンが勝ち取ったトロフィーの数は10個にのぼる。リーグ優勝(3)、スコティッシュFAカップ(4)、同リーグカップ、ヨーロッパ・カップウィナーズカップ、同スーパーカップ(各1)である(正確には、これに、1980年まで行われていたスコットランド限定の変則システムのカップ戦『ドライブラ・カップ』の制覇1回を加えると、総計11個)。

 もちろん、ここで注目すべきは“最初の7個”――つまり、強大なグラスゴウの二強、セルティックとレインジャーズの天下にあって、ファーギー率いるアバディーンがほぼ独占的な一時代を築いたこと――。そこに、「長い歴史の中でたまにはそんなこともあるだろう」ではとうてい説明が付かない、重大な意義があったのは言うまでもない。

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