「それはないんじゃないの?」
客観的に正しいブーイングと間違ったブーイングがあるのか、それは誰にもわからない。しかし「そのブーイングはないんじゃないの?」という程度の異議申し立てなら許されるだろう。5月25日の湘南対広島の試合において、筆者の基準で「それはないんじゃないの?」という印象的なシーンが2つあったので紹介したい。
まずは62分、湘南・高山薫が広島の右サイドをドリブルで突破、エリア内深くに侵入して左足クロス。ボールはミスキック気味になり、広島GK西川周作の頭上を超えてゴールバーに当たると、ファーポストにこぼれた。
そこに、逆サイドから湘南・古林将太が突っ込んできて西川と交錯する形に。ボールは西川が一瞬早くキャッチし、古林はジャンプした後エリア内で転がった。西川は珍しく激高、ボールを地面に叩きつけると古林に対し何事かを叫んだ。
このシーンでは、湘南サポーターから西川に盛大なブーイングが飛んだ。しかし、筆者が「それはないんじゃないの?」と思ったのはその後のことだ。湘南サポーターは、それ以降西川がボールを触るたびにブーイングをし続けたのだ。
まるで、FCバルセロナからレアル・マドリーに移籍したルイス・フィーゴに浴びせたかのような、怒りがこもった強いブーイングである。
重ねて言うが、本稿は「客観的に正しいブーイングがある/ない」を述べているわけではない。ブーイングという手段は一種の武器であり、相手にプレッシャーを掛けるためにあえて行われることもある。
ゆえに、湘南サポーターにとって正しいものであった可能性はある。しかし、経緯から推測するにこのシーンで湘南サポーターがブーイングしたのは、端的に言えば「西川の言動は不当だ」と考えたからだろう。