“柏の背番号9”に対する哲学
様々な部分におけるこうした成長は、布部コーチとの居残り練習をはじめとした工藤自身の日々の努力の賜物であろうし、柏U-15時代から一緒にプレーをしてきた同期の酒井宏樹が日本代表に定着し、海外移籍を果たしたことにも刺激を受け、モチベーションにもなっているのだろう。
さらに加えて、工藤の言動を聞いていると、今シーズンから「背番号9」を譲り受けた点も、大きく影響しているのではないかと思われる。
「キタジさん(北嶋)は苦しい時や、ここぞという時にゴールを決めてチームを引っ張ってくれた。レイソルの9番は、チームを救える存在でなければならない」
工藤は“柏の背番号9”にそんな哲学を持つ。ただ単にゴールを決める選手ではなく、チームを引っ張り、スタジアム全体を沸かせることのできる特別な存在……。
そんな北嶋の背中を見てきた工藤は、背番号9の重みを感じながら、今まで以上に責任感を持ち、あえて自分自身にプレッシャーを掛けてプレーをしているようにも見えるのだ。そしてその責任感とプレッシャーこそ、工藤の能力を爆発させる呼び水の役割を果たしたのではないだろうか。
2010年アジア競技大会ではU-21日本代表に選ばれているものの、これまでは日の丸とはほとんど無縁だった工藤。今回のザックジャパンもテストを兼ねた招集だとは思うが、実直で、貪欲で、人一倍負けず嫌いの彼のこと、必ずや今回の代表招集を自分の糧にし、今後の成長へと繋げるに違いない。
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