工藤はどこを評価されたのか?
“インテンシティ”は試合に向けたトレーニングや準備で高めることも必要だが、適した人選をしていくことは、チームの伸びしろを増やすことになる。その意味では、初招集となった工藤壮人(柏レイソル)と東慶悟(FC東京)の抜擢は理に適うものだ。
総勢26人が名を連ねたが、2列目の主力である岡崎慎司(シュトゥットガルト)と本田圭佑(CSKAモスクワ)の合流がブルガリア戦に間に合わず、本田は足の故障が完治していない。
そうした事情もこのポジションの人員が膨らんだ要因であることは確かだ。またイタリア人指揮官は彼らの成長を認めながら「代表に定着するほどの実力までは付いていない。引き続き成長してほしい」と釘をさしてもいる。
それでもこのタイミングで工藤と東を選んだことは、少し長いスパンでの強化の意図が含まれているのではないか。2人の共通点についてザッケローニ監督は、複数のポジションをこなせることに加え「特筆すべきは、ゴールに向かう時に良さ、迫力を出してくれる」と語った。
強さ、速さ、巧さを基準に見れば、彼らと同じポジションに何人もの有力候補はいるが、“攻撃の回転数を上げる”効果をもたらすための高い資質は特筆に値する。
工藤は今季のJリーグでここまで8得点、加えてACLで4得点を決めベスト8進出の原動力になっている。そうした決定力はストライカーとしてもちろん重要で、今回のアピール材料となったことは間違いないが、おそらくザックが注目したのはフィニッシュに至る過程のところだ。
基本的に足を止めず、幅広く的確なポイントを見付けてタイミング良く動けること、チャンスを作る過程でシンプルに関われること、そうした動きを90分継続できることが、日本代表にさらなる“インテンシティ”を注入できる素地として、認められているのではないか。