史上最強の呼び声が高い今季のチーム
鈴木氏は続ける。
「バイエルンは伝統的にハードワークを全員にさせるチームで、前線から激しいプレッシングをさせます。ところがバルサとの初戦は、ディフェンスラインは高く保ちながら前からは追わない。中盤をコンパクトにし、メッシにはシュバインシュタイガーがマンマークする。
そうすることで、中盤に入ってきたとき、クサビのパスを入れたときにボールを刈り取ることができました。後ろで回している分にはバイエルンとしてはまったく怖くない。中盤より前に来たときに一気に奪う、と。
一方、2戦目では一転して前から追いました。メッシが欠場したこともありますが、駒不足で不安の残るセンターバックに強烈なプレッシャーをかけたのです。そして、選手は2試合とも戦術を忠実に守りました。この人心掌握術はさすがですね」
自らのスタイルは残しつつも変化は加えていく。これはピッチ外のマネジメントにも当てはまる。昨季、すべてが準優勝で無冠に終わったが、戦力は充実しており、完成度はかなり高いチームだった。だが、そこからさらに上積みを加えた。
今季獲得したのは、CBのダンテ、ボランチのハビ・マルティネス、攻撃的MFのシャキリ、FWのマンジュキッチ、ピサロ、など。主力級の選手を補強することで、ポジション争いを活性化させ、控えメンバーを底上げすることで戦力をまた一段引き上げたのだ(昨季のエース、ゴメスがサブに回るほどだ)。
そして衆知の通り、来季はグアルディオラの招聘、ゲッツェの獲得が決まっている。伝統的な強さを維持しつつも常に変革を求める。バイエルンの強さはそこにある。
過去を振り返っても70年代にチャンピオンズカップを3連覇するなど、バイエルンは一時代を築いたことは幾度もある。だが、今季のチームは関係者、ドイツ国内でも「史上最強」の呼び声が高いという。
三冠を達成し、名実ともに歴史に残るチームになれるか――。明日、それが証明されるだろう。
【了】