目指すは4年ぶりの王座奪還
一方のランパードは、W杯優勝監督のフィル・スコラーリや、選手と監督の双方で欧州制覇歴を持つカルロ・アンチェロッティの指導を経験した後でも、モウリーニョこそが「最高」と言ってはばからない。
「勝者のメンタリティをチェルシーに植えつけ、自分をトップレベルに進化させてくれた」という元監督への敬意は、26歳でチェルシーでのリーグ初優勝を経験した05年当時も、来季に4年ぶりのリーグ優勝を狙う34歳の今も変わっていない。交渉進展の一因とされる減俸受け入れも、「モウリーニョとの1年」を意識しての譲歩と思われる。
「創造性を持つ選手たち生かすことは必要だけど、勝利をもぎ取るしぶとさも取り戻さなければ。プレミアリーグの王座に返り咲くためにも」と、残留が決まったランパード。
大詰めの5月までトップ4の座が確定できなかった今季だが、チームの戦力は、現状でも1度目のモウリーニョ就任時を上回る。レアルとは今季末の離任で合意に至ったことから、再招聘に伴う違約金が不要となり、チェルシーは推定150億円規模の補強に注力できる。
西ロンドンの「ブルーズ信者」たちは、ランパード残留の報を耳にした時点で、1年後の吉報を心待ちにし始めた。覚えているのだ。モウリーニョという新監督の下、前年度はトップ4が精一杯だったチェルシーがプレミア優勝へと邁進し、ランパードのゴールで王座を射止めた9年前の1年間を。
【了】