興梠の3点目に繋がった一連のプレー
浦和の3点目は、他のチームでは見られない特殊なボール回しから生まれている。浦和が相手ペナルティエリア中央付近に楔を入れ、そこから落とされたボールを、“右ストッパー”の森脇がダイレクトで右アウトサイドの平川へ送る。この時点で、鳥栖のエリア付近は7人の選手で固められ、浦和の選手は4人で完全に数的不利の状況だ。
しかし森脇が平川へパスを送ったことで、一度中央へ集結していた鳥栖の守備陣はサイドへのスライドを強いられる。このタイミング、スピード感が重要で、森脇のパスがダイレクトでスピードがあり、かつ丁寧な受け手に優しいパスだったことで、相手のスライドが後手に回り、平川は対面の金民友との1対1を非常に有利な状況で迎えることができた。
また、ディフェンスラインのスライドが後手に回ったことでディフェンダーはボールウォッチャーになってしまい、中央でのマークが途端にルーズになった。平川のクロスもピンポイントで見事なものだったが、中央で2人に挟まれた状態の興梠が半ばフリーでヘディングできた要因は、そこに到るまでのボールの動かし方に主因があったと言える。
森脇は4点目、5点目、6点目でもそれぞれ得点の起点となっており、試合を決定づける重要な仕事をしたと言えるだろう。決してフィジカル面で恵まれた選手ではないが、高いボールコントロールの技術力とポジショニング、そして判断のレベルが高く、その特長が遺憾なく発揮された試合となった。
そして6得点の内、実に5点に3バックいずれかの選手が絡んでいる。ここに、今季浦和が見せているサッカースタイルの多くが内包されていると言える。また、森脇、那須という新加入の選手が攻撃面で結果を出しており、シーズンオフの補強が実に効果的なものだったと改めて実感できる。
しかし一方で、この戦い方は同時に脆さを抱えている。