理想とする攻撃的サッカー
川崎を率いて4年目を迎えた関塚隆監督から就任当時の話を聞いたのは、07年2月のことだった。
「理想はもちろんあって、82年のブラジル代表が好きだし、近年だとデルボスケのレアル・マドリー。川崎がそういうサッカーじゃないのは、就任時の状況が関係していて、オファーを受けたのは勝点1差でJ1昇格を逃した頃。
翌年の昇格は義務だけど、大胆な補強ができる状況でもなかった。ただ、戦力を分析して基盤は今のままでいけるぞと」
理想は攻撃的なパスサッカー。だが、堅守速攻という前任者の遺産を生かす手堅い手法で“公約”を果たすと、中村憲剛や谷口博之ら当時の若手を育てる一方で、鹿島のコーチ時代に磨いた緻密なスカウティングで相手を丸裸にしていく。
3年目にはJ1で2位になり、ACLの出場権も手に入れた。話を聞かせてもらったのは、その2ヶ月後のことだった。
ロンドン五輪が終わって改めて思うのは、置かれた状況にしても、チーム作りの手法にしても、川崎時代と似ていたなということだ。
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