未来へと辿り着くための遠大な改革
極端な話、若い世代のサッカーファンはもはやスタジアムのリアルを求めていないのではないか。分析の末、そのような達観に大金常務は到っている。実際、サッカーライターでも、現場に行かずモニター越しで戦術を分析すれば十分だという考えを持つ者もいる。
「そこが一番怖いところです。日本の場合、ヨーロッパのように理屈抜きでサッカーを観に行く人々が大勢いるという文化ではありませんから。ヴァーチャルでもリアルでも“観る”ということを文化としてつくっていかなければいけない。そのためには、首都東京のクラブとしてヴァーチャルをどう活用するかということも戦略の1つとなるかもしれません」(大金)
欧州のようにサッカークラブが社会の一員に位置づけられていない日本では、スタジアムで観戦するファンをつくり出すことは簡単ではない。しかし、阿久根社長がクラブの行動指針として掲げた『自立』が、選手やスタッフの気質を前向きにすることだけでなく、ホームタウン活動において様々な波及効果を与えることにつながると、状況は大きく変わる。
「今年からFC東京は、将来の日本を背負って立つ首都・東京の『子ども』の『自立』、そしてその子どもを教育する『先生』の『自立を引き出す力』のお手伝いをすることで、ホームタウン東京に貢献していきます。それによって『FC東京が東京にとって必要な存在』として認知され、都民をスタジアムにいざない、ビッグクラブをめざしていきます」(阿久根社長)
一足飛びに3万人、満員にすることは難しい。そんな都合のいい要素はどこにも転がっていない。だがクラブが一体感を持って2万6000人に到達すれば、必ずや次は見えてくる。都民の共感を得ているだろう未来へと辿りつくための遠大な改革は、いま始まったばかりだ。
【了】