選手が育ちやすい土壌
さらに、と鈴木氏は続ける。
「長く活躍できる選手を育てるために、人間性も重視されました。各クラブはトレーニングセンターや寮を持つことを義務付けられ、学校と提携することで勉学も疎かにはさせない。メンタルの強さを身に付けさせたのです」
これには協会のスポーツディレクターを務めるマティアス・ザマーの影響が大きい。彼は成長させるべきポイントとして、“人間性”を重視した。若年期に育むことで、才能に溺れて挫折する選手が出ることを防げるという。
また、東ドイツ出身のザマーは、いい意味で旧東側のシステムを取り入れた。いわゆる縦割りだ。ドイツのサッカーは、誰もが献身的で攻守の切り替えが早い。これをユース年代から徹底させたのだ。
シュバインシュタイガーやラーム、エジルらは技術的にはもちろん優れているが、ハードワークもできる。選手の入れ替わりがあっても、粘り強いドイツ代表ができあがる。
そして、ドイツには若手が成長しやすい土壌がある。ブンデスリーガは外国人枠を設けていない。外国人にドイツ人が追いやられそうだが、もう1つ規定がある。それが2つ目のポイントである「ドイツ人枠」だ。
各クラブは12人のドイツ人選手との契約を義務付けられ、そのうち6人は地元出身の選手でなければならないという。日本人選手が移籍しやすい一面がある一方で、ドイツ人選手の出場機会が増え、自国選手が経験を積みやすくなったのだ。
余談にはなるが、ブンデスリーガの観客動員数は欧州一。クラブのある街から生まれた選手がクラブに多くいることはこれと無関係ではないだろう。
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