Jのファンは日本代表に感情移入できなくなっている
植田 正直に言うと、Jのファンは日本代表にはもう感情移入できなくなっていると思う。自分のクラブの選手がいないんだよ、今のスタメンはほとんどが海外組だから。
豊川 いるのといないので全然違う。
植田 だって巻(誠一郎、現東京V。千葉時代に代表に選出)がいる時楽しかったよな? 中澤(佑二)が中心の時楽しかっただろ?
豊川・五十嵐亘(以下、五十嵐) そうですね。
植田 今の東京の立場で言うと、大事なナビスコカップがあるときに代表に選手を取られて、その選手がベンチに座ったまま結局試合に出られないし、東京は試合に負けたりする。「えっ!?」と思うよね。クラブ第一に思っている奴は代表を嫌いになる。日本代表ってW杯前とか大事な時じゃなかったら、(チームの)足かせになる時があるよな。WBCの野球ファンの気持ちがちょっとわかる。
豊川 実際にそういう声も結構聞きますよね。
植田 昔はW杯に行ったことがなかったけど、今はそれぞれのチームの奴らもW杯に行くことが夢だった時代から離れちゃってる。毎週やっている連ドラと2時間スペシャル見る違い。代表戦だけ見たい人は、2時間スペシャルを見たいんだよ。だけど、オレらは連ドラだし大河ドラマ。シーズン終わっても、来シーズンに向けてエンドレス。
五十嵐 流れが楽しいですからね。
――代表だと今は女性も多くて、割とキャピキャピした感じがあります。盛り上がっているのはいいと思うのですが、昔のように選手を後押しする応援になっていないような。
植田 いいんじゃないの、ならなくても。極論を言うと、アジア予選は応援なんてなくたって勝つ。いろんなことを言う奴がいるけど、オレは20年以上応援している。日本中で『ドーハの悲劇』もドーハでのアジアカップ優勝も、両方同じ場所から見ているのはオレしかいない。記者席を抜きにしたら。
ただ、その間ずっとブレずに同じ視点で見ている人間からすると、今の時代だっていいんだよ。だけど胃がキリキリする思いをして戦ってきた昔を知らないで単純に「今は良いよね」って言ってたら、いざ日本が勝てなくなった時に戦うことは無理だと思うけどね。