チームによって異なる応援のスタイル
――朝日さん、FC東京は「自分たちはこういう応援しているんだ」という特徴・コンセプトはありますか?
植田朝日(以下、植田) コンセプト……昔(東京ガス時代)からずっと同じかな。あまりよそのチームを気にしたことがないので。メインスタンドから見ている人はわからないけど、自分のいるゴール裏で言うと、どこが相手でも盛り上がっているから相手の声なんて聞こえたことがない。なので、よそと比べたことがない。
――Jリーグのサポーターはよく、海外の方から「ずっと唄ってばかり」と言われたりしますが、そうした論調についてはどう思いますか?
植田 気にしない。基準をどこに見ているかだよね。アルゼンチンもずっと歌ってるし、ブラジルだってそう。歌わない試合は歌わない。要は、現場を見ていない人が適当に言っているだけ。
オレは高校時代に初めてイングランドに行って、そこでサッカーを見た。「イングランドはピッチが近いから、ボールを蹴る音が聞こえるぞ」って言われていましたが、実際行ってみたら歌声がすごくて何も聞こえない。だから、何を信じていいかわからない。「イングランドには自然発生的に応援歌が広まった」という話がありますけど、あんなの(歌っているのは)特定の奴だけでしょう。だから、反論しようとも思わない。
――スコットランドはどうですか?
中島 スコットランドは、皆で何か一つのことを一緒にやるということができない国民性なんですよ。一般論として、向こうの人は自己主張が強い。セルティックのケースで言うと、応援したい人はアウェイへ行く。ホームでは、決められた自分の席で勝手に見ている。それで味方がボールを持っているときに、相手が近づいてきたら「マノン!(敵が来てるぞ、の意)」って教えたり、一緒にプレーしている感覚に近いと思います。歌ったり叫んだりしたい人は、アウェイに行って盛り上がって酒を呑んで帰ってくる。ホームとアウェイでは客層が違う。
面白いのは、ホームだとバックスタンドやメインスタンドで見ているような人たちが、アウェイだとゴール裏で「一緒にやらせてよ」と言ってくること。おじちゃんとかおばちゃんも。
植田 日本も多分そう。アウェイの方がまとまる部分がある。「味スタで大声出して応援するのは、ヴェルディ戦だけ」という人がいっぱいいますよ。周りが全員立ってるから、必然的にそうなるよね。
豊川亮太(以下、豊川) 自分がマイクを持たせてもらっている時は、アウェイの試合では普段ホームでバックスタンドとかで見ている人たちにマイクを向けています。ホームではゴール裏から「どうも、バックスタンドのみなさ~ん!」って言ってあいさつしたり。ゴール裏とバックスタンド、メインスタンドがコンタクトを取れるようにします。
植田 ここに来る前のスタートとして、「どこのチームのサポーターと話さなきゃいけないんだ?」っていうのがあって。単純にサッカーが好きな奴と、応援が好きな奴とじゃ議論にならない。「オレが出てくる意味はあるの?」と感じるし。出ることでクラブに迷惑掛けることの方が多かったりすることもある。サッカーを見ない奴、いっぱいいるもんね。オレは、サッカーも見てるんだよ。どちらが正しいとも、正しくないとも思わないけど。