誤審の場面はマネジメントにも問題があった
サッカーの歴史を振り返れば、誤審によって試合展開、結果が大きく左右されたことは、それこそ数限りなくある。
ただ、この日の試合で一番問題とすべきなのは、運営側のマネジメントだろう。興梠のゴールが生まれた直後、埼玉スタジアムのオーロラビジョンに興梠がオフサイドであるという明確な映像が流されてしまった。あれを見た鹿島の選手達に、納得しろというのは無理がある。
人間がさばくスポーツである以上、誤審は常につきまとう問題だ。それにどう対処していくのかは、積極的に突き詰めていかなければならない課題だが、それと同様、試合を円滑に、安全に進めることも重要なポイントになる。
現時点で、ビデオ判定やデジタル機器での判定が導入されていない以上、オフサイドやゴールラインを割った、割らないという判定は、副審の技量に大きく寄りかかっている。ミスが起こりうるという大前提で試合を運営している以上、ミスが起きたときにそれをわざわざスタジアム内で共有して問題を顕在化させることに、果たして意味はあるのだろうか。
誤審が起きたとして、再発防止への努力や適正な処罰などはしっかりと行われるべきだ。ただ、そのことと今回のマネジメントは分けて考えるべきだろう。
誤審の問題は本当に残念だったが、しかしそれ以上に、この日埼玉スタジアムで行われた試合はJリーグが回帰すべきものを包括していた。選手達がここまで気持ちを露わにし、そしてその気持ちをピッチ上で表現した試合は、近年ではお目にかかれないレベルのものだった。
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