経済とリンクする勢力図
欧州クラブ一を決める大会は毎年開催されてきたにもかかわらず、57大会で優勝したクラブは22しかない。そのうちレアル・マドリーの通算9回を筆頭に、複数回優勝しているチームが12ある。
1回のみ優勝はセルティック、HSV、フェイエノールト、アストン・ビラ、ステアウア・ブカレスト、PSV、レッドスター、マルセイユ 、ドルトムント、チェルシーの10クラブ。
97年のドルトムントを最後に、昨季のチェルシーまで初優勝したチームはなかった。CLは一部のビッグクラブのための大会なのだ。その傾向は最初からあったにしても、明確にリッチクラブしか勝てなくなったのは、ボスマン判決があった95年以降である。21世紀にはクラブ間の貧富の格差が明白になり、04年に決勝へ進んだモナコが唯一の例外といっていい。
最も豊かなのはプレミア勢だった。ユナイテッド、リバプール、アーセナル、チェルシーはCLの常連となる。スペインはチャンピオンズカップ発足時からの強豪であるレアル、バルセロナが健在。ただし、2強以外のクラブはCL参戦を果たしても財力が続かず、かえって没落してしまうケースが多い。
バレンシア、ソシエダ、セルタ、デポルティーボ・ラコルーニャ、ビジャレアルがそうで、CLの常連になれる体力があるのはレアルとバルサだけだった。90年代に栄華を誇ったイタリア勢は後退している。プレミアとは対照的に、お金が続かなくなった。
しかし、プレミア勢とレアル、バルサの覇権にも変化が表れている。金融危機とUEFAが導入を予定しているファイナンシャル・フェアプレー(FFP)の影響だ。
欧州の有力リーグは、それぞれ財政基盤が違っている。プレミアリーグは投資の対象、セリエAは個人オーナーの出資、スペインの2強に関しては金融機関がいくらでも貸してくれる。
金融危機で最も影響を受けそうなプレミアは案外に持ちこたえているが、それでもオイルマネーのクラブ(シティとチェルシー)以外は財布のヒモが固くなった。スタジアムの安全性が疑問視されて観客動員が落ちたイタリアは最も落ち込みが激しく、レアルとバルサは自分たちはともかく、リーグ自体が破綻の危機にある。
それぞれ事情は違っているのだが、CLを支配してきたリッチクラブの共通項は借金体質だということ。補強を続けてきたリッチクラブの大半は、このままだとFFPの規約に引っかかる可能性が高い。そうなればCL出場権は取り上げられてしまう。つまり、これまでと同じクラブ運営を続けられなくなっている。