ドイツの変化で一番象徴的だったライセンス制度
それからリーグとクラブの関係で言うと、ドイツはヨーロッパの中で一番うまくいっている。もちろん、クラブが毎年赤字を出してはいけないという厳格なルールはあるんですけど、その失敗例なんかも、わりと早い段階で共有されていて、お互いライバルなんだけど、みんなで良くなろうという感じが、どちらかといえば強かった。
とはいえドイツもその頃が、時代が変わる境目だったんですね。
「CL(チャンピオンズリーグ)で勝つためには、現状の抑えるだけの制度ではダメだ」と言っているバイエルンと、「共存共栄のためには、みんなで監視しながら破綻を抑えるのが必要だ」というリーグ側とのせめぎ合いが、すでに始まっていました。
97年といえば、ちょうどCLが世界的なイベントとして確立された頃で、そのシーズンに優勝したのがボルシア・ドルトムント。だからバイエルンも欧州のタイトルを熱望していて、まさに「パクスUEFA(UEFA覇権による平和)」。その前夜みたいな感じの時代でしたね。
ドイツの変化で一番象徴的だったのが、ライセンス制度の考え方。それまでは「ドイツは毎年赤字を出してはいけない。出したらアマチュアリーグ降格」というルールだった。それが「これからはクラブもファシリティ(施設や設備)や選手に投資したり、ユースの施設を改善したり、未来のために投資をしないといけない。3年くらいかけて赤字を解消するプランがあれば、それは認めてあげよう」という言い方をするようになりました。
確かにドイツは、欧州の中でも手堅く健全ですけど、逆に彼らは「われわれのルールを欧州が遵守すべき」という主張です。それが(UEFA会長の)プラティニがいう「ファイナンシャル・フェアプレー(欧州内の各クラブに収支のバランスを取るよう求めるもの)」につながっているんですね。